第四話 不釣合いのコンビ

 それからすぐ、東京事務所に戻り、多摩川の河川敷で稽古の日々、自信をつける為に、前日代々木公園の歩行者天国で自主公演に行った。いつも親父が言ってくれていた言葉「呑まれるな呑め」を心の中でリピートしながらお客さんを食ってかかるぞという気持ちで向かったが、やればやるほど自信を失っていく、それもそのはず、チョロ松は芸歴5年、私とコンビを組むまででも数えきれないほどの舞台を経験してきてやるべき事がわかっている。それに対して私の台詞は支離滅裂。しかし初々しかったからか、立ち止まって観てくれるお客さんはとても暖かく応援してくれた。ご祝儀をくれるお客様の声で、「チョロ松君、凄いですね。お兄さんも頑張って下さい。」この言葉には悔しさもあったが本当に励まされた。

 実は私は人前にでるのがすごく苦手で幼少の頃から「あがり症」であった。緊張すると、どもりぐせがあり、デビューした当時は覚えた台詞も人前に出ると全部とんでしまい、何をしゃべっているのかわからない状態だった。でも、チョロ松はすばらしいお猿さんでダメな調教師の私とでも芸だけはやってくれる。猿まわしの場合はやっぱーお客様はお猿さんの芸を見ている。私がダメな分、逆にチョロ松の芸をよりすごいものにしていたのかもしれない(笑)。
 いよいよギャラをいただいての初めての営業、埼玉県桶川市役所のお祭り。その頃の猿まわしと言えばそれはそれは人気があり、会場は狭かったが、大道芸形式で、300~400人は集まっていたかなと思う。極度の緊張感の中、自分が何をしたのか全く覚えてない状態、これこそあっという間の30分。一通りの芸はチョロ松が完璧にやってくれたのは間違いないが、台詞がきちんと出来たのかすら憶えていない。こんな形で自分の猿まわし人生が始まった。