第十話 フライデー事件

 多忙な夏休みも無事に終え一息つけると思ったがチョロ松の人気は勢いを増し、テレビだけでなくマスコミへの出演や取材が連日連夜続いた。チョロ松の持たれるイメージからか女性誌が多かったことを憶えている。そして1クール(3ヵ月)だったCMの契約も当然1年に延長された。仕事よりも大学生活が優先だったはずの約束は、3年生の後期授業を迎えていつの間にか仕事優先にシフトが変わっていた。午前中はチョロ松を連れて大学の授業に出席し(当然チョロ松は授業に出るわけがなく営業車のゲージで待ってるんですが)、午後から営業という日もあった。しかしどんなに多忙であってもチョロ松と私の原点である代々木公園の歩行者天国には大道芸をするため通い続けた。そんな時にチョロ松の私生活が暴かれることになる。スターの証しとも言えるあの「フライデー」に狙われていた。歩行者天国のど真ん中で若いギャルに囲まれてデレデレしているチョロ松が激写されたのだ。カメラマンから来週号のトップページに載せるとのこと。あのフライデーに激写されたのだから発売されるのが楽しみだった。そして発売日の金曜日、朝一でコンビニに買いにいき確認するとチョロ松はギャルに囲まれて写っているのだが・・・あれ?私の姿が写っていない。よく見てみると、私は左足だけが写っていた。当たり前、スターはチョロ松なのだから。

 チョロ松人気はとどまるところを知らない。ダイナミックセラーズ社がチョロ松の写真集をつくりたいと提案してきた。撮影してくださるのは、あの高島史於先生だ。先生は動物写真を撮ったことがない。ダイナミックセラーズ社と周防さるまわしの会は先入観をもたずにチョロ松を撮ってくださる先生にお願いすることにした。

 完成した写真集「チョロ松くん」と10年後、意外な所で遭遇することになる。

 20数年に渡り周防さるまわしの会のアドバイザーとしてご尽力いただいている田口洋美氏と1997年10月東北大学を訪問した。田口洋美氏は、2005年、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程終了後から現在まで東北芸術工科大学で教授として活躍されている。民俗学者宮本常一先生、並びに民俗文化映像研究所の姫田忠義所長に師事し、日本各地をその足で歩き廻りフィールドワークを実践してきた民俗学の継承者である。私達とは、周防さるまわしの会東京事務所開設前後から、猿まわしの歴史研究、芸の開発や企画などに参加してくださり、さらに阿蘇お猿の里猿まわし劇場オープン前から調教、芸猿の飼育管理などを中心にアドバイザーとしての役割を、そして現在は猿まわし芸能を取り巻く法制度等を含む環境整備に深く関わって下さっている。というか私にとって兄のような存在であり、かけがえのない友人であり、酒を飲む量を競い、猿まわし芸のあり方を口角泡を飛ばして議論する相手でもある。
 田口さんから紹介されたのが東北大学で日本猿を研究されている鈴木教授である。仙台市内の大学を訪ねると鈴木教授直々に正門に迎えられ「五郎さんに会えると思わなかった。チョロ松くんは私の日本猿への常識を超えた素晴らしい日本猿です」と挨拶をいただいた。鈴木教授の部屋に案内され、書籍棚にはお猿さんに関する本が数千冊はあったが、その中から先生がおもむろに一冊を取り出し「写真集チョロ松くんは私のバイブルです。新学期の最初の授業で必ず生徒に紹介するんですよ」とおっしゃった。意外な方がチョロ松のファンであり写真集「チョロ松くん」の愛読者であったことに喜びと誇りを持ったことを今でも忘れません。

 次回は鈴木教授に絶賛いただいた写真集「チョロ松くん」の撮影や出版について紹介する予定です。